フォード・ジャパンの日本市場撤退に思う。

フォードの日本市場撤退に思う。

先日フォード・ジャパンが日本市場からの撤退を発表しました。「米フォード、年内に日本撤退=輸入・販売停止へ:時事ドットコム
主な理由としては皆さんご存知の通りなのでここでは詳細は申し上げませんが、私が特に気になったのは「日本は閉鎖的な市場であり、売上を向上させる見込みが立たない(要約)」という趣旨の発言があったことです。

目次

それって酸っぱいブドウなんじゃない?

これとある社長さんがおっしゃっていたことと同じだったんですよね。その方は愛媛県という市場に見切りをつけて東京に進出して見事に事業を軌道に乗せられていて、大変立派な方なんで、例えとして適当ではないかもしれません。しかしお話を聞いた時に違和感を覚えたのも事実です。

確かに地味に営業・啓蒙するために時間はかかりますが、地元の皆さんに分かる言葉で説明したり、サービスの内容を工夫したり、少ない予算でも売れるような提案をすべきなのではないかと思うんですね。
私も数年前まで東京でWEB制作に関わっていて「本当にWEBが必要なのは、地方ではないのか」という思いで帰ってきてぬこファクトリー設立に至ったわけです。

そこで様々なサービスを企画しましたが、上手くいかない時期もあったし、今も試行錯誤中です。しかしそれによってお客様の声を聞き、弊社でお手伝い出来ること、出来ないこと、これから新しく挑戦しなくてはいけないこと(WEB広告事業とか)が分かってきました。

「あのブドウはきっと酸っぱいんだ」

と言って背中を向けることは簡単です。しかしフォードを見ていると「本当に手を伸ばす努力」をしたのかな?と疑問を持ってしまうのです。

モノが良くても売れるわけではない

去年まで輸入車に関わる仕事をしてたこともあり、フォードの車には何度も実際に触れたこともありますし、WRCなどモータースポーツのファンだったので購入を検討した時期もありました。残念ながらタイミング的に購入には至らなかったのですがフォードの車はいいクルマであることは間違いありませんし、国産車にも肩を並べることが出来るクオリティです。

しかし売れない。

これは世の中の社長さん、事業主さんならご経験があることと思います。

「こんなにいいサービス(製品)なのになぜ売れない」
「この良さが分からないのは市場が未熟だからだ」
「消費者の理解力が足りないからだ」

違うんですね。
売れないことには様々な理由がある。弊社のサービスもそうです(笑。価格的にもサービス内容もいい「はず」なのにご理解頂けない。
でも選んでもらえないことにはしっかりとした理由がある。
これだけサービスや製品が溢れている世の中では作っただけではダメなのです。

昔イベントの仕事をお手伝いしていた時にも違和感を感じていました。
イベントを企画し会場をセッティングしスタッフも揃えて「さぁ!」となってもお客様が集まらない。仕方がないので着ぐるみを出して、暇そうな親子連れを無理やり座らせてグッズを渡してイベントに参加させる。
集客の努力も告知も何にもしないで「参加者が集まることが前提」で予算をかけてイベントを実施して、いざ誰も集まらなかったらその場しのぎでごまかすという、なんとも大雑把な段取りばかりでした。

商品を開発したりサービスをリリースしたり、情報発信することは実は簡単なんです。大事なのはお客様に「選んでもらうこと」なのに、必ず選んでもえらると勘違いしている企業が多いのではないかと思うことがあります。

そこをまずは見極めないと、時間もコストもかかっただけで徒労に終わったしまったということになりかねません。

これからの企業がとるべきコミュニケーション

昔日本人宇宙飛行士「毛利衛」さんの本を読んでいて、選考過程でインド人の候補者が
「こんな面接は無意味だ!こんな考え方はインドではありえないんだ!」
と憤慨しながら面接会場から出てきたそうです。

これはある意味アメリカの「アメリカが基準であるという」考え方が好きなアメリカの文化を知る上でもっともアメリカらしいエピソードであると思います。
「俺たちアメリカ人が作っているんだから世界最高だぜ!」
という自負と自信なのでしょうね。

もしかしたらフォードもこれと同じ轍を踏んでしまったのかもしれませんが、この考え方も見方を変えてみると単なる顧客の声を無視した「顧客軽視」と言えるのでないでしょうか?

自社の製品やサービスに自信を持つことは大事なことです。ですが、これからの企業はもっとお客様の声に耳を澄まして市場から学ぶべきでしょう。
SNSや広告の運営も大事ですが、それと同じように「お客様と親密になって常にニーズを探り、自社を柔軟に変化させ続けていくこと」が情報発信力とは別の企業のコミュニケーション能力なのではないかと思います。

ちなみに毛利衛さんは先のインド人候補者を見て
「NASAはアメリカの組織なんだから彼らの考え方に自分も合わせないと選んでもえらえないよね」
という発想で見事に日本人初の宇宙飛行士に選ばれました。

お見事!

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