沢木耕太郎さんのネーミングセンスに学ぶ
目次
沢木耕太郎さんは日本トップレベルのコピーライターだ。
最近沢木耕太郎さんの著作「旅する力」を手にする機会があり改めて読んでみたのですが、いや〜相変わらず素晴らしい。飾らない文章の中に息づく熱い思いと、何より文章の使い方がかっこいい!
ハードボイルドの冷めた文体に沢木耕太郎さんご自身の控えめなお人柄が合わさって、なんとも味わい深い文体になっています。
そして毎回その著作タイトルのセンスには痺れますね。本屋さんで思わず手が出てしまうなんとも渋いネーミングばかりなのです。私は思うのですがもし沢木耕太郎がノンフィクション作家ではなく「コピーライター」の道を歩んでいても超一流の実績を残していたのではないかと思うのです。
いえ、実際に出版活動においてコピーライターとしても超一流であることを実証されていると言っても過言ではないと思います。
以下では沢木耕太郎さんの代表作を出版年度順にご紹介していきましょう。
沢木耕太郎さんの代表作
『若き実力者たち 現代を疾走する12人』 文藝春秋(1973年)
『敗れざる者たち』 文藝春秋(1976年)
『テロルの決算』 文藝春秋(1978年)
『一瞬の夏』 新潮社(1981年)
『バーボン・ストリート』 新潮社(1984年)
『深夜特急 1〜4』( 深夜特急ですよ!!なんてかっこいい!!!)
『王の闇』 文藝春秋(1989年)
『彼らの流儀』 朝日新聞社(1991年)
ねぇ、どうです?どれも体が震えるようなかっこいいネーミングセンスばかりでしょ?
中には
「〜ざる者たち」
「一瞬の〜」
など、テレビや映画、出版物でマネされたタイトルも見られますね。
このように沢木耕太郎はコピーライターとしても超一流であることがお分かり頂けるのではないかと思います。
では沢木さんはどのように著作タイトルを決めていらっしゃるのでしょうか?
「旅する力」にその経緯が書かれてあったので一部抜粋してご紹介します。
沢木耕太郎さんが著作のタイトルを決めるまで
タイトルをどうするかについて、最後まで候補として残ったのは「飛光よ、飛光よ」だった。
しかし、私の内部では、数年前に見た映画の『ミッドナイト・エクスプレス』の記憶が強烈に残っていた。タイトルとして「ミッドナイト・エクスプレス」はつけられないが、その日本語訳を借りることは許されるのではないか。「ミッドナイト・エクスプレス」をそのまま訳せば「深夜急行」になるが、「深夜特急」のほうが落ち着きはいい。エクスプレスではなく、鈍行に乗っての旅のようだったが、私もまたトルコの受刑者たちと同じく、私の「ミッドナイト・エクスプレス」に乗ろうとしていたことは間違いないのだ・・・・・。
私は連載のタイトルを「深夜特急」とすることとした。『旅する力』 新潮社 沢木耕太郎著作 より引用
こうして見ると沢木さんの思いをそのままストレートに込めたタイトルということがよく分かりますね。でもこれが良かった!
逆に「ユーラシア大陸 乗り合いバス道中記」とかいうタイトルなら果たしてここまで日本のノンフィクション作品のベストセラーとして認知されたか甚だ疑問です。
思えば名作と呼ばれる本のタイトルはみな古典も含めて、個性的で読者の心を一瞬でつかむものが多かったですね。
お客様に「お!」と思わせるようなタイトルを考えよう
本は基本的に本棚に背表紙を読者にむけて陳列されています。
これってあるものに似ているんです。
そう!『検索結果の表示』に似ているんです!!
それもそのはず、HTMLは論文を作成するための文書構造から発展した言語であり、グーグルが構築した検索結果も「優れた論文は多くの論文に引用される」という理論から構築されており、本や論文の性質や構造というのは似ているんですね。
ですからベストセラーや今売れている本、古典のタイトルを研究すると何か人の心をつかむヒントが見つかるかもしれませんよ?!
SEO対策のためにも読書をしよう(笑。
そう、本を読みましょう。
最近はAI(人工知能)のことがよく話題にあがりますが、AIだけでは人の心を動かすようなタイトルを考えることは無理でしょう。また検索ツールを解析しただけで作ったタイトルでは検索結果を上げることはできても実際にクリックされたり、CVを稼ぐことは難しいと思います。
サイトのタイトルとは、本におけるタイトルと同じです。
ネットばかりしていないでたまには本を手にとってみませんか?
それではまた。
追記:ぬこファクトリーは5月10日をもって個人事業主となりました。
今後ともよろしくお願いします。
それではまた!